真空ポンプ購入のポイント

真空ポンプとは、その名の通り人工的に減圧された空間を作るためのポンプのことをいいます。
一般的には、エアコンのガス抜きに使われるくらいですが、産業用としては広く利用されています。
たとえば減圧を利用して、弁当などに使われる醤油容器に醤油を入れたり、歯磨きのチューブに歯磨き剤を注入するのも、真空ポンプにより減圧する作用を利用しています。
また、真空乾燥を利用したフリーズドライ製品なども、真空ポンプを利用しています。
このように真空ポンプの活用方法は産業用には広く使われていますが、個人用に使えるかとなると、使用用途はやはりエアコンのガス抜きくらいです。
ですから、エアコンが壊れてしまって、交換するときに、自分自身で取り付けるのであれば、真空ポンプは絶対に必要となります。
真空ポンプも安価なものですと15,000円程度から流通していますし、エアコンの交換取り付け料も15,000円から20,000円程度ですので、2台以上の交換を自ら行ないたい場合は、真空ポンプを購入しても損はしないという計算にはなります。
ですが、真空ポンプは、取り扱いや作業手順を一歩間違えると爆発する可能性があるので、熟練した方の指導を仰ぐことが必要です。

真空リークに窒素を用いる理由

半導体などの加工に用いる真空プロセス装置は、一度真空に引いたらそのままと言う訳には行きません。一定の周期で真空を破ってメンテナンスを行う必要があります。真空ポンプにも注油やガス抜きなどのメンテナンスがやはり必要です。

真空を破壊(リーク)するのは単に空気などを入れるだけですので真空引きよりも簡単そうですが、リークは装置を再び真空雰囲気にすることを考えて行わないといけません。空気中には酸素などのように金属と反応しやすいガスがありますので、リークするのに空気は適当ではないのです。

活性化エネルギー障壁が高くて金属と反応しにくい希ガスを用いてリークするのも不適当です。なぜなら、超高真空雰囲気を作るのに用いるイオンポンプは、金属とガス分子との化学反応による吸着を原理として動作するものですから、反応性の低い希ガスでリークした場合、超高真空に引く時に悪影響が出ます。

そこで、真空リークには窒素を用いるのが通例となっております。窒素にも反応性はありますが、金属に吸着される性質は酸素ほど顕著ではありません。それに、飽和蒸気圧が高く、加熱処理(ベーキング)を行うことによって金属表面から簡単に離脱する特徴もありますので、超高真空引きへの影響はありません。

このような理由から、試料を真空装置に導入するためのロードロックのリークには窒素が用いられます。また、真空装置に関するパーツを室内に保管する場合には、窒素を満たした袋や容器の中に収納することが望ましいとされるのです。

真空ポンプの排気速度

真空ポンプを選択する場合、最も重要なのはもちろん到達真空度と最大動作圧力ですが、その排気速度も結構重要です。

粗引きに用いる低真空用のポンプは到達真空度が低い代わりに排気速度が大きく、逆に、超高真空用のポンプは排気速度を少々犠牲にしても到達真空度を高くするように設計すると思われがちですが、実際の真空ポンプはそのようになってはいないのです。

到達真空度が低くて動作圧力が高い油回転ポンプですが、排気速度はどんなに速くても毎秒0.1立方メートル程度で、高真空用のターボ分子ポンプはこれより50倍も速いのです。それから意外なのが、油拡散ポンプの排気速度の高さです。立ち上がりまでの時間が数十分かかり、すぐに立ち上がるターボよりも長いので排気が遅いと思われがちですが、こちらの方が実動作時ではターボよりもさらに10倍速いのです。

超高真空で用いるスパッタイオンポンプにしても油回転ポンプより10倍も速く、クライオポンプに至ってはほとんど青天井にまで速くできるのです。このクライオポンプは大気圧からでも動作できるのですが、高価な液体ヘリウムを用いるのであまり広く使われません。コストももちろん真空ポンプ選びの重要なファクターですから。

高校物理と真空ポンプ

古代のある哲学者は、「重い物ほど速く落下する。百倍重い物は百倍速く落下する」と考えました。ところが、近世にこの考えに疑義を示した高名な物理学者が衆人環視の中で行った、重さの異なる二つの物体の落下実験によって、この考えは否定されることになりました。

なぜこのような誤解が生じたのかと言いますと、実際に鳥の羽根などのように軽いものは、硬貨などよりもゆっくりと落下するからです。羽根がより大きな空気抵抗を受けることで落下速度が遅くなることが示されたのはもっと時代が下ってからです。

これは、高校物理の授業の中で簡単に実演できます。まず、透明な筒の中に羽根と金属球を入れ、大気圧においては羽根が金属球よりもゆっくりと落下する所を見せます。次に、この筒に真空ポンプ(メカニカルブースタポンプなど)をつないで真空に引きますと、今度は羽根と金属球が同じ速さで落下するようになるのが観察されます。

この実験の目的は、重力加速度が物体の質量によらず一定であることを示すためのもので、真空ポンプの役割は副次的なものです。真空技術の重要性に鑑みて、高校生にもっと真空に親しんでもらえるような実験を考えないといけません。

真空ポンプの基本

真空ポンプとは、密封された容器内の気体を排出して内部を真空にするための装置です。気体を吸入する「吸気口」、真空ポンプ内部に吸入した気体を外部に排出する「排気口」、「ポンプ」によって構成され、空気を排出する基本構造に油を用いるウェットポンプと、油を用いないドライポンプに大別されます。

真空ポンプとして一般的なロータリーポンプ(油回転型真空ポンプ)はウェットポンプの一種で、排気量、到達圧力、価格などの面で総合的に優れています。この他、ウェットポンプとしては油拡散式などがあります。

ドライポンプは、油や液体を真空室内に使用しない機械式の真空ポンプで、半導体の製造プロセスのように、僅かな蒸気の混入でも製品の歩留まりに影響が出てしまう電子・半導体産業分野で使用されています。

真空ポンプは原理、使用圧力によっても分類され、必要とする真空度、排気量、また排気する気体の成分などによって、使用する真空ポンプの形式を選択することになります。

真空ポンプによるエアコンのエアパージ

真空管ポンプの主な用途の一つがエアコンのエアパージ(真空引き)です。

エアコンの冷媒回路内にはR410Aというフロンガスとコンプレッサーオイル(内部充填済み)が循環するようになっていますが、ここにそれ以外の空気や水分などの不純物が混ざると、エアコンが性能を出しきれなくなるだけでなく、故障の原因になることもあります。そのため、取り付け工事のときに配管内の空気や水分を外部へ排出する事をエアパージといいます。エアパージには真空ポンプによる方法とフロンガスによる方法があります。

しかし、フロンガスによるエアパージは、ガス圧によって不純物を押し出す方式ため、大量のガスが大気に放出されてしまいます。また、不純物の除去が不十分になりやすく、冷媒がR410Aになってからは禁止されたようです。

このため、現在は真空ポンプによるエアパージが推奨されています。配管内の不純物を真空ポンプを使って外部に排出し、可能な限り真空にしてから冷媒を充填させる方式で、「真空引き」とも呼ばれています。

真空ポンプの到達真空度とパッキング

真空ポンプの到達真空度はもちろんその種類によって大きく異なりますが、意外に見落としがちなのが真空系統のパッキングです。このパッキングをおろそかにすると、どんなに到達真空度の高いポンプを用いても真空がリークしてしまったり、真空雰囲気が汚染されてしまうからです。

高真空・超高真空を扱う装置の場合、部品を接合する部分には、ガス吸着が比較的少なくて適度な柔軟性のある銅やアルミ製のガスケットを挿入し、その上からボルトなどで締め付けます。ガラス製の真空筒と金属の継ぎ目には、アルミやゴムパッキングが用いられます。

このパッキングの種類によって、ガラス真空筒内部の真空度が大きく違って来ます。油拡散ポンプで比較した場合、新品で非熱処理のままのネオプレンゴムで封じた場合と、熱処理したネオプレンゴムで封じた場合を比較しますと、到達真空度は後者の方が1桁以上高くなります。しかも、この熱処理したネオプレンは、アルミパッキングよりも高い真空度を確保でき、パッキングには弾性変形する材料が極めて有効であることが理解できます。

一般家庭に真空ポンプ

一般家庭で真空ポンプを用いるとすれば、一体どのようなシチュエーションが考えられるでしょうか。真っ先に思いつくのは、高野豆腐やドライフルーツのように、真空乾燥技術を用いて作られる食材の自作でしょうが、これはあまり大きな需要が見込めそうにありません。ただ、食物を保存するのに真空を利用するのには、一定の需要があるかも知れません。

冷蔵庫に真空ポンプを内蔵して食品の長期保存に利用することも考えられますが、生鮮食品を真空中に置いておきますと、水分が蒸発して高野豆腐のように干からびでしまいます。そこで、冷蔵庫を閉めると同時に一旦真空引きをして、ある一定の真空度に達したら、今度は幾分水蒸気を含んだ窒素を満たしてやれば良いのです。

そして、再び冷蔵庫を開ける前に中に酸素を供給して、窒息しないようにします。問題は窒素と酸素をどうやって供給するかですが、一般家庭に窒素ボンベは物々しいので、周囲の空気から窒素・酸素だけをより分けるのが良いでしょう。あまり頻繁に開け閉めするのには向きませんが、ビールの冷蔵などのように真空のままでも支障ない場合もありますので、将来は商品として成立する可能性はあります。

食料品を保存するのが主目的の冷蔵庫ですから、真空の質も問題になります。ロータリーポンプではオイルミストが漂いますし、騒音も問題になりますので、メカニカルブースタポンプを内蔵させるのが最適でしょう。